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窯元と料理人によるクリエーションの競演~鍋島,有田,三川内の産地の枠を超えた器「響心-kyoshin-」新作発表イベント

10月20日(火)京橋の「KITCHEN STUDIO SUIBA」(東京都中央区京橋1丁目12-7)にて、食空間デザインStudio Stråle(代表:佐藤由美子)がプロデュースした和食器の展示と、京橋のグランメゾン「Chez Inno(シェ・イノ)」の古賀純二シェフによる盛り付けデモンストレーションを行います

本イベントは、ポーセリンペインティング作家であり、空間コーディネーターの佐藤由美子氏(Studio Stråle代表)にギャラリーから個展の申し出があったことがきっかけで始まりました。

自分ひとりの作品を飾るのではなく、父母の故郷である佐賀、長崎の伝統工芸作家たちとの共作を。佐藤氏のラブコールに応える形で、<鍋島焼>畑萬陶苑4代目・畑石眞嗣氏、<有田焼>李荘窯4代目・寺内信二氏、<三川内焼>平戸松山窯16代目・中里月度務氏とその弟の中里進也氏という、各産地を代表する4人が、それぞれ佐藤氏とコラボレーションした新作を一堂に発表します。400年以上も前の陶工たちの探究心をルーツとする4人のものづくりと、佐藤氏の感性が重なり合って生まれた作品は、作家性が感じられる現代の器でありながら、おのずと古格が備わる洗練された仕上がりとなっています。

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「北大路魯山人「美食倶楽部」に捧げるオマージュ」
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会場となるのは京橋駅から徒歩5分の「KITCHEN STUDIO SUIBA」。鍛冶町、桶町、槙町など京橋エリアの旧町名が表すとおり、江戸時代ここには多くの職人たちの暮らしがありました。大正時代には北大路魯山人の主宰する会員制の「美食倶楽部」があり、夜な夜な政財界の大物が食と器に対する見識を深めていたといわれています。

現在も小さな古美術店や画廊が多く点在する街の歴史と美食倶楽部へのオマージュとして、本イベントでは、新作を使ったテーブルコーディネートの提案に加え、日本のフレンチの歴史に名を残す名店、京橋「シェ・イノ」の料理長で卓越した技能者<現代の名工>も受賞した古賀純二氏が盛り付けのデモンストレーションを行います。窯元は料理を想像しながら器を創り、料理人は器を想像しながら料理を創ります。来場者の皆様には、新作の器と料理が初めて“響き合う”瞬間に立ち会っていただきます。

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「本質を見つめ直す時代へ、いまこそ伝統工芸を見直す」
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現在、新型コロナウイルスの影響で伝統工芸の販路と作品発表の機会は大きく減少しています。だからこそ、本イベントは従来の展示会や売り場とは異なるアプローチを重視しました。料理とのセッションや、作品とじっくり向き合うことを可能にするミニマムな展示もそうですし、成熟したビジネス街としても知られる京橋だからこそできるつながりにも期待しています。コロナショックばかりがきっかけではありませんが、次々に新しいものをという時代から、本質を見つめ直す時代へ、世間のムードが徐々に変わりつつあることにいち早く気付いた企業やビジネスパーソンの方々にもぜひ本イベントに足をお運びいただき、伝統工芸と産地のポテンシャルをくみ取っていただければ幸いです。

試食もお楽しみいただける古賀シェフによる盛り付けデモンストレーションは事前予約制、展示スペースは終日ご自由にお入りいただけます。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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「新作ラインナップ/佐藤氏コメント」
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<畑萬陶苑>畑石真嗣×佐藤由美子(Hataishi Shinji × Sato Yumiko)

江戸時代に将軍家への献上品を焼いた鍋島藩窯の伝統を受け継ぐ美の世界。今回は洋風料理やほかの器との組み合わせも加味して、格の高さを示す鍋島の高い高台にゴールドを施しています。窯元が追究し続ける透き通るような白磁には、畑石氏の卓越した筆使いで鍋島の伝統的な文様である蟹牡丹や笹が描き上げられ、さらにポーセリンペインティングと呼ばれる西洋磁器上絵付け技法による彩色をアクセントとして加えています。



<李荘窯>寺内信二×佐藤由美子(Terauchi Shinji × Sato Yumiko)

国内外の名シェフも評価する李荘窯の有田焼は染付が基本であり、寺内氏がライフワークとしても続けている仕事です。今回は、1670年頃に作られた素晴らしい染付の台皿へのオマージュとなる作品づくりに挑みました。柿右衛門様式の始まりといえる余白を生かした構図。模様を前身から背面まで繋げて表わす着物のような文様の配置も上品です。さらに、唐草の中の丸文様に18世紀に大流行した五弁花や伝統的な柄をプラチナで描き入れ、時代時代の美を凝縮しました。



<平戸松山窯>中里月度務×佐藤由美子(Nakazato Tsutomu× Sato Yumiko)

平戸藩の御用窯として発展した三川内焼の染付は「一枚の絵のよう」と評されることがありますが、今回はあえて瓔珞(ようらく)文様というパターン柄を選び、平戸松山窯の高い技術の筆使いを際立たせました。瓔珞とは、古代インドの王族が身に着けていた装身具などに用いられる装厳具を指します。洋食器を意識した形状の器面に瓔珞文様を描いた結果、白磁の肌に無国籍な美しさをたたえた他にはない作品が出来上がりました。



<平戸松山窯>中里進也×佐藤由美子(Nakazato Shinya× Sato Yumiko)

三川内のもうひとつの伝統技法が白磁で造形物を表現する「細工物」です。なかでも進也氏が得意とする「根付」は、日本独特の繊細な美的感覚が育て上げた小さな芸術品として、熱心なコレクターがいるほど。その一子相伝の技術で今回、深皿の上で楽しそうに遊ぶ唐子のやんちゃな表情、今にも飛び出しそうなカエルの動きを写実的に表現しました。食器という用途だけでなく、季節の花とあわせたり、オブジェとしてもお使いいただけます。

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「古賀シェフコメント~新作に寄せて」
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白いキャンバスでないと絵が描けないと思っている人は多いのではないでしょうか。僕は、器はもっと自由であっていいと思います。僕自身、佐賀県武雄市出身ということもあり、質朴とした土味あふれる古唐津の器もあれば、白い磁肌に色とりどりの絵付けがされた有田焼の器もある食卓が日常でした。
料理に関しても特に最近の西洋料理の傾向として、より有機的な方法で素材と向き合う方向へシフトしつつあります。そういう意味でも、これからの料理の盛り付けはきめ細やかさよりもリアルで大胆な表現になっていくように思います。——器も料理ももっと自由におおらかに。

会場「KITCHEN STUDIO SUIBA」のご紹介

高層ビルの谷間にたたずむ、ガラスで覆われた箱のような建物が「KITCHEN STUDIO SUIBA」です。
食のコンテンツを通じたコミュニケーションの創出を促すシェアキッチンスペースとして2019年にオープンしました。
昭和通りに面した建物正面のガラスは大きな引き戸となっており、外のような開放感を得られる1階が古賀シェフによる盛り付けデモンストレーション会場、脇道側の隠れ家的なエントランスを入ってすぐの階段を上がった2階が展示会場となります。

「響心-kyoshin-」新作発表イベント
開催日
2020年10月20日(火)11:00~18:00
会場
KITCHEN STUDIO SUIBA(東京都中央区京橋1-12-7)
参加費
無料
参加作家(窯元)
畑石眞嗣(畑萬陶苑)、寺内信二(李荘窯)、中里月度務(平戸松山窯)、中里進也(平戸松山窯)
参加シェフ(レストラン)
古賀純二(シェ・イノ)
主催
食空間デザインStudio Stråle
共催
東京建物
企画制作協力
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